ロードバイクで「平均速度40km/h」と聞くと、多くの人がプロの領域だと感じるかもしれません。しかし、体の仕組みを理解し、計画的にトレーニングを積むことで、一般のライダーでも近づくことは十分に可能です。
この速度を維持するには、筋力だけでなく心肺機能や持久力、そして栄養補給の知識も欠かせません。つまり「速くなる」ためには、ただがむしゃらに走るのではなく、体づくりの方向性を整えることが鍵になります。
この記事では、ロードバイクの平均速度40kmを現実的な目標として捉え、必要なパワーの理解、効率的なトレーニング、そして体を支える食事や補給方法までを総合的に解説します。自分の限界を少しずつ押し上げたい方に向けた、実践的なロードマップです。
ロードバイク 平均速度 40kmは現実的か?用語と目安を整理
まず「平均速度40km/h」と聞いてどんなイメージを持つでしょうか。一般的にこの数値は、アマチュアの中でも上級者が平坦なコースで短時間維持できるレベルを示します。初心者や中級者にとっては現実離れに感じるかもしれませんが、速度を正しく理解することが第一歩です。
「平均速度」と「巡航速度」の違いをまず押さえる
「平均速度」は信号や休憩も含めた全体の速さ、「巡航速度」は走行中のみの一定速度を指します。例えば信号の多い街中では平均が25km/hでも、郊外の直線路では巡航30km/hが可能というケースもあります。この違いを意識することで、無理な比較を避け、自分の現状を正確に把握できます。
初心者・中級者・上級者の現実的な平均速度レンジ
初心者は20〜25km/h、中級者で25〜30km/h、上級者で35km/h前後が目安とされます。40km/hは競技経験者か、非常に条件の良い場面で達成できる速度です。つまり40km/hは「夢」ではなく「到達点」。まずは自分がどの段階にいるかを把握し、段階的に目標を上げていくことが大切です。
「40km/h」は距離40kmと混同しやすい──意味の整理
検索などで「ロードバイク 40km」と見ると、速度ではなく距離の話である場合もあります。距離40kmは、一般的なサイクリングでは中距離にあたり、初心者でも2時間前後で走行可能です。速度40km/hとは全く別の概念ですので、この記事では「速度」を中心に扱います。
正しく測る:サイクルコンピューターとアプリの使い分け
速度を正確に把握するには、サイクルコンピューター(サイコン)がおすすめです。GPSアプリでも測定可能ですが、トンネルや高架下では誤差が生じることがあります。一方でサイコンはセンサー式で信頼性が高く、平均や最大速度も自動計算されるため、トレーニングには最適です。
信号・交通状況が平均に与える影響
都市部では信号待ちや渋滞、交差点の一時停止などが多く、平均速度が大きく下がります。逆に信号が少ない河川敷や郊外ルートでは、平均値が巡航速度に近づきます。走行環境によって数値は大きく変化するため、比較する際は条件を揃えることが重要です。
例えば、信号の多い市街地では平均25km/hが限界でも、郊外の直線路では30km/h台を維持できることがあります。つまり「速さの基準」は環境次第。単に数値を追うのではなく、自分の走るフィールドに合わせて目標を設定することが、着実な上達への近道です。
- 平均速度と巡航速度は異なる概念
- 40km/hは上級者でも短時間維持が限界
- 信号や風、地形によって実測値は変化する
- サイクルコンピューターで正確に記録を取る
時速40km/hに必要なパワーとフォームの基礎
次に、時速40km/hを実現するための身体的条件を整理します。この速度は単なる筋力ではなく、「空気抵抗に抗う持久的な出力」が問われます。つまり、体力・姿勢・ペダリングの効率を三位一体で高めることが鍵になります。
空気抵抗は速度の3乗で増える:基礎物理をやさしく理解
空気抵抗は速度が上がるほど急激に増大します。具体的には、速度を2倍にすると抵抗は8倍になるという計算です。このため、30km/hから40km/hへ上げるには単純な努力では足りません。フォームを整え、風の抵抗を減らすことが効率化の第一歩となります。
体重別の必要出力の目安と限界の捉え方
例えば体重70kgのライダーが平坦路で40km/hを維持するには、約300〜330ワットの出力が必要とされます。これはFTP(1時間維持可能な最大出力)を上回るため、長時間の維持は現実的ではありません。短時間の区間を目標にし、段階的に持久力を高めましょう。
エアロポジションと前傾角度:楽に速くなる姿勢作り
背中を丸め、頭を下げる「エアロポジション」は抵抗を大きく減らします。ただし無理な前傾は腰や首を痛める原因にもなるため、ハンドル高を少しずつ調整し、体が自然に慣れる姿勢を見つけることが重要です。フォームの改善だけでも速度が2〜3km/h上がることがあります。
ケイデンスとギア選択:効率を落とさない回し方
脚を力任せに踏むのではなく、1分間90回転前後のケイデンスを保つと効率が高まります。重いギアで筋力に頼ると疲労が早く、スムーズな回転が崩れます。軽めのギアで「回して進む」感覚を身につけることが、巡航速度を上げるコツです。
ブレーキ・コーナリングの損失を減らすライン取り
速度を上げるためには「減速を減らす」こともポイントです。コーナーの手前で適切に減速し、立ち上がりをスムーズにすることで平均を維持できます。つまり、速く走るとは単に踏むことではなく、いかに無駄をなくすかの工夫でもあります。
例えば、フォームを変えずにペダリングだけ頑張っても、空気抵抗の壁は破れません。逆に、姿勢を整えて抵抗を下げれば、同じ力でも速度が上がります。これはまさに「頭を使って速くなる」アプローチであり、40km/hを目指す上で最も現実的な戦略です。
- 40km/h維持には約300Wが目安
- 空気抵抗の低減が最大の課題
- フォーム・ケイデンス・ライン取りを見直す
- 体への負担を減らしながら効率を上げる
トレーニングで40km/h巡航に近づく方法
平均速度を上げるには、単発の練習ではなく「目的をもった継続トレーニング」が欠かせません。40km/hを目指すには、心肺機能を高める有酸素運動と、筋出力を引き出す無酸素トレーニングの両方をバランス良く行う必要があります。
FTPを高める持続走:閾値トレーニングの組み方
FTP(機能的作業閾値)は、約1時間維持できる最大出力を指します。この数値を上げると、同じ力でより速く走れるようになります。具体的には20分走を3本、FTPの90〜95%で行うのが基本です。息が上がるほどではなく、「きついけれど続けられる」負荷を目安にします。
VO2maxインターバルで上限を押し上げる
VO2maxとは、酸素を取り込む最大能力のことです。短時間で心拍を高めるトレーニングによって、全体のパフォーマンスが底上げされます。1分全力+2分回復を5セット程度行う「高強度インターバル(HIIT)」が代表的です。週に1〜2回で十分な効果が得られます。
スプリントと筋力系:神経系を活性化する短時間刺激
全力スプリントは筋肉だけでなく神経系の反応速度を高めます。10〜15秒のダッシュを数本入れることで、力の伝達がスムーズになり、巡航中のペダリング効率も上がります。短い刺激でも継続することで、「速く動かす感覚」が自然に身につきます。
LSDと回復走:土台を作る長時間低強度
LSD(ロング・スロー・ディスタンス)は低強度で長時間走るトレーニングです。脂肪燃焼能力や毛細血管の発達を促すため、結果的に持久力が伸びます。心拍数を最大の60〜70%に保ち、2〜3時間ゆっくり走るのが理想的です。体を疲れさせずに強くする基盤作りです。
週次メニュー例:忙しい社会人向け現実プラン
例えば週3回の練習でも効果的に組めます。火曜:インターバル(30分)、木曜:FTP走(40分)、日曜:LSD(2時間)というサイクルです。無理のない頻度で行えば、3か月後には巡航速度が3〜5km/h向上する例もあります。継続こそが最大のトレーナーです。
例えば、週末だけの練習でも、目的を明確にすれば着実に成長します。重要なのは「何を鍛えるか」を意識すること。距離ではなく質を重視し、体調や仕事の疲れに合わせて柔軟に調整することで、無理なく速度アップを狙えます。
- FTPとVO2maxを軸に練習を設計する
- 高強度と低強度のバランスを意識
- 週3回でも目的別に行えば効果は十分
- オーバートレーニングを避けて継続する
環境条件とコース設計で平均を底上げ
同じ力で走っても、環境次第で平均速度は大きく変わります。向かい風や気温、路面抵抗など、見落としがちな要素を理解すれば、結果は劇的に変わります。つまり「環境を味方につける」ことが、40km/hへの現実的な近道です。
向かい風・追い風の読み方と当日の対応
風向きは平均速度に最も影響します。追い風時には回転を意識し、向かい風ではフォームを低く構えて抵抗を減らします。横風の場合は車体を安定させることを優先しましょう。気象アプリで風向を確認し、行きが向かい風・帰りが追い風になるルートを選ぶのも有効です。
勾配・路面抵抗・気温が及ぼす影響
勾配1%の上りで時速は約2km/h落ち、逆に下りでは同じだけ上がります。路面が粗いアスファルトでは転がり抵抗が増え、タイヤ空気圧や材質が結果を左右します。また気温が低い日は空気密度が上がり、抵抗が増えるため速度が出にくくなります。
ドラフティングの可否と単独走の戦い方
集団走行では前走者の後ろに入ることで抵抗を約30%減らせます。単独走の場合はその恩恵がないため、姿勢とリズムが勝負です。ペースを一定に保ち、無理な加速を避けることが安定した巡航につながります。安定性が上がれば、自然と平均速度も向上します。
信号密度の少ないコース設計と時間帯の工夫
信号の多い市街地よりも、郊外の直線ルートが有利です。早朝や交通量の少ない時間帯を選べば、止まる回数を減らせます。特に週末の早朝は、気温や風の条件も安定しており、効率よくトレーニングを行うのに最適です。
タイヤ・ホイール・ヘルメットなど空力機材の効果
タイヤの転がり抵抗を減らすだけで、同じ力で時速1〜2km/h上がることがあります。軽量ホイールやエアロヘルメットも効果的です。ただし高価な機材に頼るより、まずはタイヤの空気圧やチェーンの清掃など、基本的な整備を優先しましょう。
例えば、同じ出力でも朝6時の涼しい時間帯と、午後の暑い時間では1〜2km/hの差が出ることがあります。これは環境を整えるだけで得られる“無料の速度”とも言えます。努力だけに頼らず、条件を味方につけることも戦略の一つです。
- 風・温度・路面など環境条件が速度を左右する
- 信号の少ないルートと時間帯を選ぶ
- ドラフティング効果は最大30%の抵抗減
- 機材よりもまず整備と姿勢を最適化する
補給・カロリー・水分:40km走の実務ガイド
ロードバイクで40kmを走る際、速度だけでなく「エネルギー管理」が重要になります。走行中にエネルギー切れを起こすと、どんなに体力があってもパフォーマンスは急落します。つまり、適切な補給と水分管理こそが、安定した走行の裏付けとなります。
40kmでどれだけ消費する?カロリーの目安
体重70kgの人が時速30kmで40kmを走ると、消費カロリーはおよそ1000〜1200kcalに達します。速度が上がるほど消費量も増え、40km/hでは1500kcalを超えることも。体の燃料となる糖質(グリコーゲン)は限られているため、補給を怠ると途中で「ハンガーノック(極度のエネルギー切れ)」に陥るリスクがあります。
糖と脂質の使い分け:補給食の選び方
短時間高強度の走行では糖質中心、長距離走では脂質利用も意識するのが理想です。エネルギージェルやバナナは吸収が速く、走行中の即効補給に適しています。一方、ナッツやカロリーバーは長時間の安定補給に向いています。走行時間と強度に応じて組み合わせましょう。
摂取タイミング:スタート前・走行中・直後
出発30分前に炭水化物を摂取し、走行中は30〜40分ごとに少量を補給するのが基本です。終了後はゴールから30分以内に、糖質とタンパク質を1:3の比率で摂ると回復が早まります。つまり、トレーニングの成果を最大化するには「走り終えた後の食事」も重要な要素です。
水分・電解質・暑熱対策:季節別の注意点

夏場は汗によってナトリウムなどの電解質が失われやすく、脱水や痙攣の原因になります。1時間あたり500〜800mlを目安に、スポーツドリンクで補うのが安全です。冬でも乾燥で水分が奪われるため、喉の渇きを感じる前にこまめな摂取を心がけましょう。
胃腸トラブルを避けるための小技
補給量が多すぎると胃が重くなり、パフォーマンスが落ちます。特に冷たい飲料を一気に摂るのは避け、少量を回数分けて口に含むのがコツです。普段の練習で補給を試し、本番で体が慣れているものを使うことが大切です。
例えば、40kmの中距離ライドでも、補給を怠ると終盤で失速します。エネルギー切れは気力では克服できません。計画的な補給を行うことで、最後まで安定した走行ができ、結果的に平均速度の維持にもつながります。
- 40km走でも1000kcal以上を消費する
- 糖質・脂質を使い分けて効率的に補給
- 走行中は30〜40分ごとにエネルギー補給
- 水分と電解質をバランス良く摂取
- 補給は事前に練習で試しておく
初心者が避けたい落とし穴と安全マナー
平均速度を上げたいと焦るあまり、基本をおろそかにするとケガや事故の原因になります。特に初心者は「頑張りすぎ」「整備不足」「安全軽視」の三つが典型的な落とし穴です。まずは安全と習慣を整えることから始めましょう。
無理な目標設定を避けるペース設計
いきなり40km/hを目指すのではなく、現状の平均+2km/hを短期目標に設定します。数値が小さく見えても、体感では大きな進歩です。無理をすれば疲労が蓄積し、練習が続かなくなります。自分の体と相談しながら、持続可能なペースを意識しましょう。
痛みの原因になりやすいポジションの見直し
膝痛や腰痛の多くはサドル高やハンドル位置が合っていないことに起因します。サドルを高くしすぎると膝を痛め、低すぎると太ももに負担がかかります。ミリ単位の調整でも快適さは変わるため、ショップでのフィッティングを受けるのが最も確実です。
整備不足は遅さと危険の元:点検の要点
空気圧の低下やチェーンの汚れは、走行抵抗を増やすだけでなくトラブルの原因になります。走行前にはブレーキの利き、タイヤの亀裂、変速の調整を必ず確認しましょう。月1回の清掃と注油を習慣にすれば、走行感が驚くほど変わります。
公道での速度管理と法令・マナーの基本
ロードバイクも軽車両として道路交通法の対象です。信号遵守や歩行者優先はもちろん、車道の左側通行が原則です。スピードが出る分、周囲への注意と譲り合いの意識を忘れずに。マナーを守ることで、自分と他者の安全が確保されます。
雨天・夜間のリスクと装備
雨の日は路面が滑りやすく、制動距離も延びます。タイヤの溝やブレーキシューの摩耗を確認し、無理にスピードを出さないことが肝心です。夜間走行では前照灯とテールライトを装備し、反射素材のウェアを着用することで視認性を高めましょう。
例えば、40km/hで走行中に小石を踏んだだけでも、整備不良のタイヤでは転倒の危険があります。速度が上がるほど、リスクは比例して高まるという意識を持つことが大切です。速くなるほど、慎重さが必要になるのです。
- 短期目標は「+2km/h」程度が現実的
- 痛みはフォーム・サドル位置のサイン
- 整備と点検を習慣にする
- 交通法規とマナーを守るのが前提
- 夜間・雨天は視認性を重視する
40km目標の実践プランとチェックリスト
これまで紹介してきた理論やトレーニングを実際の行動に落とし込む段階です。ここでは、現状を把握し、段階的に平均速度を上げていくための「実践的ロードマップ」をまとめます。焦らず、確実に積み上げていきましょう。
現状把握:10kmタイムトライアルでベースを測る
まずは現時点での実力を把握します。信号の少ない平坦路で10kmを全力走行し、平均速度を記録します。これが「今の自分の現実」です。もし10kmを25分(平均24km/h)で走れるなら、次の目標は27km/hに設定するなど、短い距離から精度を高めていきましょう。
8週間の段階的プラン:負荷と回復の設計図
8週間で平均+3km/hを目指すスケジュールを例示します。1〜2週目はLSD中心で基礎体力を養い、3〜4週目はFTP走で心肺を刺激。5〜6週目はインターバルと短距離走で持久力と瞬発力を強化し、7〜8週目は実走シミュレーションを行います。週2〜3回でも十分効果的です。
機材アップグレードの優先順位と費用感
速度向上のために機材を見直す場合、最初に投資すべきは「タイヤ」と「ホイール」です。高品質なタイヤは1万円前後、軽量ホイールは5万円前後から性能向上を実感できます。逆に、空力フレームなど高額なパーツは最後の段階で検討すれば十分です。
出走前チェックリストと当日の流れ
出発前に確認すべきは、タイヤ空気圧・チェーン注油・ブレーキの利き・ライトの充電残量です。走行中は20〜30分ごとに水分補給を行い、帰宅後はストレッチと軽い補給を忘れずに。特に疲労が強い日は「完全休養」を設け、次の練習につなげましょう。
よくあるQ&Aで不安を解消
Q1:週1回しか走れません。それでも速くなれますか?
A:可能です。週1回でも目的を絞れば成果は出ます。インターバルやFTP走など高強度の練習を優先しましょう。
Q2:40km/hを維持するのに何年かかりますか?
A:個人差がありますが、週3回ペースで練習すれば1〜2年で短時間なら到達可能です。焦らず継続が鍵です。
例えば、8週間プランを終えた後に再び10km計測を行えば、たとえ1km/hでも速度が上がっていれば大きな進歩です。重要なのは「継続と観察」。失敗を恐れず、記録を積み重ねていくことが、最終的に40km/hへの道を開きます。
- 10kmの計測で現状を数値化する
- 8週間単位でトレーニングを設計
- 機材投資はタイヤ・ホイールから始める
- 出走前後の点検と補給を習慣化
- 成長を記録し、変化を実感することが継続の鍵
まとめ
ロードバイクで平均速度40km/hを目指すことは、決して非現実的な夢ではありません。正しい知識を持ち、体力・フォーム・環境を整えることで、少しずつ現実へと近づいていきます。重要なのは、数値だけにとらわれず「なぜ速くなりたいのか」を自分の中で明確にすることです。
その上で、基礎的なトレーニングを継続し、体の反応を観察しながら調整していく姿勢が大切です。トレーニングと補給、そして安全意識をバランス良く取り入れることで、結果は確実に変わります。
スピードは体力の証明であると同時に、努力の積み重ねを示す指標でもあります。焦らず、自分のペースで楽しみながら、40km/hという目標をひとつの通過点として進んでいきましょう。