韓国で自転車に乗ると、日本とは異なる独特の走行環境と出会います。車社会として知られる韓国ですが、漢江(ハンガン)沿いを中心に自転車専用道路が整備されており、ソウル市が運営する公共シェアサイクル「タルンイ(따릉이)」は外国人旅行者でも利用できます。日本語対応のアプリやクレジットカード決済を活用すれば、観光の移動手段として気軽に取り入れることが可能です。
一方で、韓国には右側通行や信号が赤でも右折可能なルールなど、日本と異なる交通ルールがあります。車道を走る場合は特に注意が必要で、川沿いの自転車専用道路を活用するのが安全面でも快適さの面でも合理的な選択肢です。知っておくべき情報を整理しておくと、現地でのサイクリングがずっとスムーズになります。
この記事では、韓国で自転車を利用する際に役立つ情報を、シェアサイクルの使い方から走行環境の特徴、注意すべき交通ルールの違いまで順を追って整理します。初めて韓国で自転車に乗る方にも参考にしていただけるよう、具体的な手順と現地の実情をもとにまとめています。
韓国の自転車環境はどのような状況か
韓国の自転車をめぐる環境は、都市部と川沿いで大きく異なります。ソウルの幹線道路は交通量が多く車のスピードも速いため、車道を走ることが難しいと感じる自転車利用者が多いのが実情です。一方、漢江をはじめとした大きな川沿いには自転車専用道路が整備されており、信号なしに長距離を気持ちよく走れる環境が用意されています。
車社会という背景と自転車の位置づけ
韓国は日本以上に自動車中心の社会といわれ、都市部の交通量は非常に多くなっています。自転車を日常的な移動手段として使う人はまだ少なく、スポーツや趣味、あるいは川沿いでのレジャーとして利用するケースが中心です。アジア経済研究所の海外研究員レポート(2017年)によると、韓国では自転車はスポーツや趣味で使うものという意識が一般的で、交通手段としての定着はこれからという段階にあります。
ただ、近年は変化も出ています。ロードバイクやマウンテンバイクなどスポーツバイクの愛好者は増加傾向にあり、シェアサイクルの普及とともに自転車で移動する人の姿も少しずつ目につくようになっています。環境意識の高まりや健康志向の広がりも、その背景にあります。
2012年に整備された国土縦走自転車道路
韓国の自転車インフラが大きく整備されたのは、2009年に始まった政府のグリーン成長政策がきっかけでした。2012年には仁川(インチョン)からソウルを経て釜山(プサン)に至る約633kmの国土縦走自転車道路が完成しています。この道路は主に川沿いに整備されており、平坦で走りやすいルートが特徴です。
その後の政権交代により事業は大幅に縮小されましたが、完成した区間は現在も多くのサイクリストに利用されています。韓国全土に自転車道が張り巡らされているというよりも、河川沿いに専用道路が伸びているという構造です。これを理解しておくと、現地での走行計画が立てやすくなります。
・漢江など大きな川沿いに自転車専用道路が発達している
・都市部の車道はスピードが速く自転車には厳しい環境
・スポーツバイク愛好者は増加傾向、シェアサイクルも普及
・国土縦走自転車道路(釜山〜仁川)は2012年に完成
- 都市部の車道は交通量・スピードともに高く、自転車での走行には注意が必要です
- 川沿いの自転車専用道路は信号なしで快適に走れる環境が整っています
- スポーツ・レジャー目的での自転車利用が中心で、利用者は増加傾向にあります
- 国土縦走自転車道路(釜山〜仁川間)は河川沿いに整備された代表的なルートです
シェアサイクル「タルンイ」の使い方と料金
ソウル市が運営する公共シェアサイクル「タルンイ(따릉이)」は、外国人旅行者でも比較的簡単に利用できるサービスです。2015年に開始され、2024年時点で会員数は約350万人を超えており、市民の3人に1人が利用するほど定着しています。アプリの外国人向けモードを使えば、会員登録なしでも日本のクレジットカードで利用券を購入できます。
アプリのインストールと外国人向けモードの設定
まず「서울자전거 따릉이(Seoul Public Bike)」というアプリをスマートフォンにインストールします。アプリを起動したら、最初の画面で「Foreigner」を選択することで外国人向けのモードに切り替わります。言語設定から日本語を選ぶと、以降の操作を日本語で進めることができます。
利用券の種類は1時間、2時間、24時間の3種類で、クレジットカード(VISA・Master・JCB)で決済できます。料金については最新情報がタルンイ公式サイト(https://www.bikeseoul.com)で確認できます。なお、一部のeSIMや国際ローミングSIMではアプリのQRコード読み取りがうまく動作しないケースが報告されているため、現地SIMや韓国対応のeSIMを用意しておくと安心です。
レンタルと返却の手順
利用券を購入したら、アプリのマップ画面で近くのステーション(ポート)を探します。ステーションはソウル市内の地下鉄出入口やバス停、観光スポット周辺に広く設置されています。借りたいタルンイのサドル下にあるQRコードをアプリで読み取るとロックが解除され、レンタルが始まります。
返却は、借りた場所と別のステーションでも構いません。前輪をステーションに入れてロックレバーを下ろせば返却完了です。アプリで返却が完了したことを必ず確認しておくとトラブルを防げます。コンビニや観光地に立ち寄る場合は「一時ロック」機能を使いますが、一時ロック中も利用時間はカウントされる点に注意が必要です。
タルンイ以外の選択肢:民間シェアサイクル
ソウル市内には、タルンイのほかに民間が運営するシェアサイクルサービスもあります。カカオモビリティが運営する「KakaoTバイク」は、ソウルをはじめ釜山・大邱・光州・仁川など多くの都市で利用でき、電動アシスト自転車が使えるエリアもあります。ポートレス型(どこにでも駐輪できる)の民間サービスは利便性が高い反面、道路上に散乱しているという批判もあります。
タルンイは公共サービスとして安定して運営されており、観光利用にはシンプルで使いやすいのが特徴です。長距離を走りたい場合や電動アシストを希望する場合は、KakaoTバイクも選択肢になります。
| サービス名 | 運営 | エリア | 電動アシスト | 外国人利用 |
|---|---|---|---|---|
| タルンイ | ソウル市(公共) | ソウル市内 | なし(子ども用小型あり) | クレジットカードで可 |
| KakaoTバイク | カカオモビリティ(民間) | 主要都市広域 | 対応エリアあり | アプリで利用 |
- タルンイはソウル市運営の公共シェアサイクルで、外国人向けの「Foreignerモード」があります
- アプリで外国人モードに切り替えれば日本語・クレジットカードで利用できます
- 民間の「KakaoTバイク」は広域対応で電動アシストも選べます
- タルンイの最新料金はbikeseoul.com公式サイトでご確認ください
漢江と主要サイクリングルートの特徴
韓国で自転車を楽しむなら、漢江(ハンガン)沿いのサイクリングロードは外せない存在です。ソウルを東西に流れる漢江には、全長240kmにも及ぶ自転車専用コースが設けられており、信号なしに長距離を走れる環境が整っています。川沿いには橋の自転車専用通路、休憩スポット、カフェ、レンタル施設なども充実しており、初めての人でも走りやすいルートです。
漢江サイクリングロードの概要

漢江サイクリングロードはソウル市内から気軽にアクセスできる点が魅力です。多くの橋には自転車専用の通路が設けられており、対岸に渡ることも安全に行えます。漢江公園沿いにはカフェや休憩所が点在しており、走りながら景色を楽しめる環境です。
ソウルの地下鉄では、週末であれば先頭または最後尾の車両に一般自転車を持ち込むことができます(平日は折り畳み自転車のみ)。輪行を組み合わせてアクセスすれば、行動範囲がさらに広がります。自分の自転車を持参する場合、飛行機だけでなく関釜フェリーなどを利用すると輸送の選択肢が広がります。
釜山から仁川をつなぐ国土縦走ルート
韓国の代表的な長距離自転車ルートが、釜山から仁川まで続く国土縦走自転車道路です。洛東江・南漢江・漢江・錦江・栄山江など主要河川に沿って整備されており、平坦な区間が多く走りやすいのが特徴です。ルート上にはスタンプポイントが設置されており、完走を目指すサイクリストも多くいます。
NaverマップまたはKakaoマップで「자전거길(자転거道)」を表示させると、自転車道ルートを地図上で確認できます。ただし、Googleマップは韓国では位置情報のルート検索機能が制限されているため、韓国国内の地図サービスを使う必要があります。
各地のサイクリングスポット
漢江以外にも、韓国各地に整備されたサイクリングルートがあります。釜山を起点とする洛東江サイクリングロードは平坦で景色もよく、日本からのサイクリングツアーも実施されています。大田(テジョン)市の河川敷にも専用道路があり、地方都市でもサイクリングを楽しめる環境が整っています。
済州島(チェジュド)には島を一周・縦断する自転車道路も整備されており、風景の美しさとともに自転車旅の目的地として人気があります。地形は起伏があるものの、独特の景観を楽しみながら走れるルートです。
・漢江サイクリングロード(ソウル):全長約240km、信号なしで走りやすい
・国土縦走自転車道路:釜山〜仁川、河川沿いに約633km
・洛東江ルート(釜山起点):平坦で景色がよく初心者にも走りやすい
・済州島一周:起伏あり、独特の景観が魅力
- 漢江沿いは全長240kmの自転車専用コースで橋の専用通路も完備されています
- 国土縦走自転車道路は河川沿いに整備された633kmの長距離ルートです
- 韓国の地図はNaverマップまたはKakaoマップで自転車道を表示して使います
- 済州島や釜山・大田など地方にもサイクリングルートが整備されています
日本と異なる交通ルールと走行上の注意点
韓国で自転車に乗る際は、日本と異なる交通ルールをあらかじめ把握しておく必要があります。走行側(右側通行)の違いに加え、信号ルールや車の動き方にも日本とは異なる点があり、車道を走る場合には特に注意が求められます。韓国観光公社(VISITKOREA)の情報でも、横断歩道では自転車から降りて押し、自転車道では右側通行が原則であると案内されています。
右側通行と進行方向の基本
日本は左側通行ですが、韓国は右側通行です。車道を走る場合、進行方向の右端を走ります。日本と逆の感覚になるため、最初のうちは意識して走ることが大切です。歩道を走る場合も歩行者の通行を妨げてはならず、自転車通行禁止の標識がある区間は通行できません。
横断歩道を渡る際は、自転車から降りて押しながら渡るのが韓国のルールです。自転車に乗ったまま横断歩道を渡ることは禁止されています。また、韓国では自転車の飲酒運転も法律で厳しく禁じられています。
赤信号での右折と巻き込み注意
韓国では、直進方向の信号が赤であっても右折(日本でいう左折)が可能なルールがあります。自転車が青信号で交差点に進入している場合でも、右折してくる車が止まらないケースがあるため注意が必要です。信号待ちをしているときでも、右から来る車の動きを確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
特に交通量の多い都市部では、この右折可能ルールによる巻き込みリスクが高まります。可能であれば車道よりも自転車専用道路やサイクリングロードを優先して走るのが安全です。信号のある交差点が少ない道も多く、流れを読んで慎重に進む判断力が求められます。
路面状況とタイヤ選択の考え方
韓国の冬は除雪剤が使われるため、路面が傷んでいる箇所が多く見られます。タイヤが細いロードバイクでは段差や荒れた舗装での走行が難しい場面もあります。実際に韓国でよく見かけるスポーツバイクはMTB率が高く、路面への対応力を重視した選択といえます。
川沿いの自転車専用道路は比較的よく整備されており、ロードバイクでも問題なく走れる区間が多くあります。一方、歩道脇の道路に自転車道が設定されている区間では、路面の凸凹や縁石の段差が高い場合もあります。走行前に路面状況を確認しながら進む余裕を持っておくとよいでしょう。
・韓国は右側通行(日本と逆)
・横断歩道は降りて押して渡る
・赤信号でも車の右折が可能→交差点では特に注意
・自転車の飲酒運転は法律で禁止
- 韓国は右側通行のため、進行方向の右端を走ります
- 横断歩道は降りて押し、赤信号でも右折してくる車に注意が必要です
- 路面の傷みが多い箇所があるため、タイヤの太さや状態を確認しておくとよいでしょう
- 可能な限り川沿いの自転車専用道路を活用するのが安全面でも快適さでも合理的です
持参する自転車で走る場合の輸送と準備
自分の自転車を韓国に持ち込んでサイクリングを楽しむ方法もあります。飛行機での輪行のほか、関釜フェリーや新門司フェリーを使えば自転車をそのまま持ち込めるルートがあります。現地調達との違いや事前準備のポイントをおさえておくと、現地での行動がスムーズになります。
飛行機とフェリーの輸送の違い
飛行機で自転車を持ち込む場合は、分解・梱包して手荷物として預けるのが一般的です。到着後は空港での組み立てが必要になりますが、仁川国際空港であれば空港内の駅から地下鉄に乗り継ぎ、そのまま自転車を持ち込んで移動することもできます(週末の場合、先頭または最後尾の車両に自転車の持ち込みが可能)。
関釜フェリー(下関〜釜山)を利用すれば、自転車を解体せずにそのまま乗船することができます。釜山はロングライドの出発点として使われることが多く、洛東江ルートのスタート地点にも近いのが便利です。航送料金や手続きの詳細はSHKライングループなどのフェリー会社公式サイトで最新情報をご確認ください。
現地での地図アプリと走行ルートの確認
韓国ではGoogleマップのルート検索機能が制限されており、自転車道の検索には使えません。NaverマップかKakaoマップのどちらかを事前にインストールし、「자전거(자転車)」モードでルートを表示させる操作に慣れておくとよいでしょう。どちらのアプリも自転車道を紫色の線で表示でき、分岐点の多い縦断ルートでも現在地を追いながら走れます。
縦断ルートを走る場合は地図アプリを定期的に確認し、縮尺を大きくして縦断ルートを把握しながら進む方法が有効です。道の分岐が多いため、こまめなチェックが道迷いの防止につながります。
走行中の補給と宿泊の選択肢
自転車道沿いにはトイレ・水道・東屋(あずまや)が各所に設けられており、長距離走行中の休憩に活用できます。一方、コンビニは自転車道沿いにはあまりなく、道を外れて探す場面もあります。補給が必要になりそうな区間では、事前に立ち寄りポイントをNaverマップなどで調べておくとよいでしょう。
韓国料理は地域ごとに多彩な選択肢があり、現地のレストランやカフェを活用しながら走るのが食事のうえでも楽しみの一つになります。宿泊については、主要サイクリングルート沿いの都市に宿泊施設があるため、1日の走行距離に合わせてルートを設定しておくと計画しやすいでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地図アプリ | NaverマップまたはKakaoマップ(Googleマップはルート検索不可) |
| 自転車輸送 | 飛行機(分解・梱包)またはフェリー(そのまま持込可) |
| 補給ポイント | 自転車道沿いは少ない。コンビニは道を外れて探すことも |
| 地下鉄への持込 | 週末は一般自転車OK(先頭・最後尾車両)、平日は折り畳みのみ |
- 自転車輸送はフェリーを使えば解体不要で釜山にそのままアクセスできます
- 韓国の地図はNaverマップかKakaoマップを事前にインストールして使います
- 補給場所は少ないため、コンビニの場所を事前に調べてから走るとよいでしょう
- 週末の地下鉄は自転車の持ち込みが可能で、輪行との組み合わせで行動範囲が広がります
まとめ
韓国は車社会でありながら、漢江沿いを中心に自転車専用道路が充実しており、シェアサイクル「タルンイ」を使えば旅行者でも手軽に自転車移動を楽しめる環境が整っています。
まず試してみるなら、タルンイのアプリをインストールして「Foreigner」モードに切り替え、漢江公園周辺を走ってみることから始めるのがよいでしょう。右側通行と赤信号での車の右折ルールの違いを頭に入れておくことで、安全に走れます。
川沿いの自転車道は景色もよく走りやすい環境が整っています。日本との違いを一つずつ確認しながら、韓国のサイクリングを安全に楽しんでください。

